はじまり
2024年の秋、休日の土曜日に自宅で過ごしていた私(ずぼんぼ)の電話機に、登録していない番号から電話がかかってきました。ややためらいましたが、電話に出たのです。
そのころ、身近なところで特殊(もはや一般化されつつあるのに特殊とはいかに)詐欺電話を受けたという話も聞いていたのに、その電話に出た背景を説明します。
背景1
さかのぼること5年か、あるいはもっと前から、私の電話宛に、ある組織の構成員を名乗る間違い電話が年に数回かかってきていたのです。毎回違う人ですが、共通しているのはこちらのことをFNYM(仮)さんと思っているらしいことと、声の様子が年配者っぽいことでした。最初の数回(これはたしか1週間のうちに何度もかかってきた)で知り得た組織名と、固定電話からかかってきたときの市外局番で検索すると、どうやら民謡の会のようです。つぎにかかってきたときは、こちらから「あなたたちは民謡の会なのでしょう、名簿に載っている番号が間違っているようですから訂正してください」と伝えました。それまでかかってきた電話は着信拒否にしているのですが、構成員が多いのか、毎回異なる番号からかかってくるのです。
しばらくかかってこなくなり、FNYMさん、無事に連絡取れたのかなあ、名簿修正されたのかなあなどと思っていましたが、しばらくしたら、また別の番号から例の組織を名乗ってフナヤマさんを指名する電話がかかってきました。その都度、「名簿を修正してください」と伝えては着信拒否設定をしていたのですが、その後も年に数回は例の会からの電話がかかってきていました。風物詩的に思えてきて、かかってこなくなるとちょっと寂しく感じたりしたかもしれません。
背景2
知らない電話番号は一切出ないという方針をとることもできますが、私の電話機は、私用と業務用で2つの回線を一台で受けるようにしておりまして、業務用のほうは未登録の番号から必要な電話がかかってくる可能性があるのです。
どちらの番号にかかってきたのかは電話機の画面には表示されるのですが、急いで出ようとすると見落としがち。明らかに怪しい番号は出ませんが、もしかしたら仕事の番号かもしれんと思うとひとまず出てしまうのです。
このとき考えたこと
どっちの番号にかかってきたのか見る前に、そもそも休日なので、業務の電話の可能性は低いと思いましたが、無くはないので念のため画面を見ました。私用番号宛でした。発信番号には国番号などついていない。0800的なやつはじまりでもない、090だか080だかで始まる携帯電話っぽい番号です。また例の組織の可能性が高いな、まだ古い名簿が流通しているのかな、また修正を要求せねばならんなと考えたのです。
電話に出たら
例の組織を想定して電話に出ました。不信感を漂わせた声で「はい」とだけ言います。それに対し、相手は「HRSW(仮)です。SGGK(仮)さんですか」と言いました。
ん?んんん?どういうことだ??? 混乱しました。
まず、わたくしの苗字は先方のいうとおり、SGGKです。自分の親戚以外にも、面識ある人で同じ苗字の人が複数いますから、それほど珍しいものではありませんが、少なくとも高校までは同じ学年にはいなかったという程度には珍しい。
つぎに、相手の名前と声です。業務でやりとりがあるHRYM(仮)さんの声と似ていなくもないし、苗字の前半が同じ。しかしHRYMさんが電話をかけてくるとしたら業務用番号のはず。休日だから私用に????いや私用の番号は伝えていないはず…しかし業務用使い始める前に伝えたことがあったのか???こちらの聞き間違いおよびなにかの間違いでHRYMさんからかかってきたとしたら不躾な対応はできないぞ。
というわけで「はい、SGGKです。失礼ですが、もう一度お名前をおっしゃいな」といった返事をしました。
「HRSWです。◯◯高原の件で連絡しました」
「えっ、◯◯高原というのは、中国地方の◯県のですか」
「はい、そうです。あの、ログハウスの件なのですが。そちらSGGKさんですよね」
「いかにも私はSGGKですが、◯県に親戚はおりますが、◯◯高原やログハウスというのはいったいどういうことでしょうか。心当たりがないのですが」
「えっ、でもSGGKさんですよね」
「はい、そうですが」
「…」
「…」
「ええと、失礼します」
「はい、どうぞ」
といったやりとりで、電話が切れました。
報告と相談
これはいったいどういうことなのか。
まずはヤマサンに「こんなことがあったのだが皆目検討がつかんのでカーチャンに聞いてみる」と報告しました。
カーチャン
中国地方(山口県)に住むカーチャンに電話をかけて、HRSW電話の内容をつたえ、わたくしの名前でログハウスがやりとりされたりしていないだろうなと尋ねましたが、なんじゃそりゃと一笑に付されました。◯県の親戚がログハウスを扱っていないか念のため聞いてみましたが、それはないと言われました。ついでにいっておけば◯県の親戚は苗字がSGGKではない。
ヤマサン
何も解決しなかったことをヤマサンに報告すると、ヤマサン調査で◯◯高原にはログハウス村的なものがあるらしいことが判明しました。HRSWさんの話はここのことだったのだろうか。
有識者会議
これまた5年ほど前から、毎週土曜日の夜、現在では私が有識者会議と呼んでいるオンライン集会が開かれています。おおむね同年輩の人々が5人以上集まり、数時間にわたってゲームをしながら各種の議題を弄ぶのです。たいていの場合、そういうのもあるのかという見識が得られるのです(役に立つのかはさておき)。
HRSW電話のことを、さっそくその日の有識者会議の議題に提示しました。議論百出しましたが、やや不気味な感じもあったせいか、わりと本気のオンライン調査が繰り広げられ、つぎのようなことがわかりました。
- ◯◯高原にはログハウス村が実在する。
- そこを舞台にアウトドア活動的なことを行う組織があるようだ。
- ようだ、というのは、クラシカルなウェッブサイトがあって、いつ更新されたのかよくわからない。
- 管理者一覧のようなものが掲載されており、その中にSGGK姓の人物の姓名が掲載されている。
- その姓名で検索すると、建築士として登録された同姓同名の人物や、別組織の経営者として同姓同名の人物の情報がヒットする。同一人物という確証はないが、そうなんじゃあないか。
- あるサイトには、業務の連絡先として携帯電話の番号が掲載されていたが、私(ずぼんぼ)の番号と間違うとは思えない番号だった
おそらく、HRSWさんが電話をかけたかったのはこのSGGKさんなのでしょうが、どうして私の電話にかけてきたのかはさっぱりわからん。サイトに載っていたのとは違う番号を使っていて、そっちにかけようとして間違ったのか?だとすれば、携帯電話の番号は苗字ごとに順番に割り当てられたりするのか?仮にそうだったとして、携帯電話で重要なやりとりをするつもりなら、通常は番号登録するのではないか?
謎を残したままにするのもこの有識者会議の美点でございまして、HRSW電話の議題はいったん終了しました。
運転三昧にて
数カ月経ち、年末を迎えますと、運転三昧と称して、自宅のある神奈川県と故郷の山口県の間を運転して往復する行事があります。この年は業務の都合上、往路日程に比較的余裕がありました。順調にいけば、◯◯高原に立ち寄れるではありませんか。立ち寄ってどうするのか定まりませんが。
現地入り
行きつけのラーメン屋で早めのばんめしを食べてから出発しました。仮眠をとったりしながら、兵庫県を過ぎたあたりで中国道方面に入り、◯◯高原を目指します。目的地が近いインターチェンジを降りたころに夜明け。雪が降り出し、高原が近づくと積雪。除雪車が稼働している気配ではあるが、路上は20cmくらいは積もっているようです。ふだんは平地在住ですが、こんなこともあろうかと、スタッドレスタイヤ装着なのでためらわず進みます。
さてどうしよう
ここまで来たらSGGKさんやHRSWさんに会ってみたい。しかしどうやって接触すればいいのか。まずは、近隣の散髪屋で髪切ってもらって、遠回しに「あそこにログハウス村がありますよねえ」などと情報収集したら、「そこならSGGKさんという人が管理していて」とかなんとか。
いずれにしてもまだ8時。腹減ったので何か食べたい。ヤマサン検索でこの時間から食べられそうな店を探します。立地、年末、朝という条件で、選択肢が限られます。ログハウス村の手前に位置する、2つに絞られました。現地に着いて、店の人が雪かきしていたほうに入店。
ついに
雑貨屋併設のパン屋です。ちょっとしたモール風になっていて、いくつかの店舗が連なった建物の一角です。
入口横にパンフレットが入った透明ケースがあって、横目で見るとログハウス関連のものでしたが、有識者会議で発見されたときに出てきた社名とは違っていました。複数業者が参入するくらい盛んな地域なんだな。ともかく、この店は先客や、あとから入ってくる客もちらほらの人気店。パンとコーヒーを注文して、大きな窓に向かって据え付けられたカウンターに座ってむしゃむしゃ。うまい。
窓の向こうにちょっとした丘があり、さらにその向こうに例のログハウス村があるようです。もう直接行ってみようかな。ところでSGGKさんの名前があった会社もこのへんよね。改めて地図で調べてみると…おやおや、同じ並びの店舗にその名前がある! これはもうこの店の人に聞いてみるしかなかろう。

食べ終わってレジに食器を戻しがてら、店の人に聞いてみました。「この建物にログハウス関連の◯◯という会社が入っているようなのですが」
SGGKです
「あ、そうですね、今はあちらの建物に移転したのですが。夫が運営しておりまして」
「えっ! 失礼ですが、SGGKさんでいらっしゃいますか」
「???はあ、そうですが???」
「実は私もSGGKと申しまして」
「???」
終章
それまでの経緯を早口で説明したわたくし。不信感を持たれないよう適宜補足するヤマサンのおかげで、店主はどうにか事情を納得してくださった様子。
HRSWさんはSGGKさんの会社(なお、表のチラシはログハウス関連の別ブランドのものだった)の利用者で、当地をいたく気に入っているそうで、しかしSGGKさんの電話の番号と私の電話の番号はやはり間違えそうにないくらい異なっていることを確認していただきました。というわけでなぜ私の電話にかかってきたのかはさっぱりわからんまま。
◯◯高原は季節の変化がよく感じられる場所だとおっしゃていました。私が訪れたときの冬の景色はたいへん素敵で、HRSWさんが気にいるのももっともだなあと思いました。
間違い電話を装った壮大な営業活動だとしたら、私も気に入ったのでうまくいっているといえなくもないのでしょうが、運転三昧途中でなければ立ち寄りにくいし、通ったり買ったりするには余裕がないし、そもそもSGGK姓でなかったらできない営業方法だしなあ。
さて今年はどうしようかな。散髪しに行きたいというのはあるが…