月刊因数分解

です

理容あずま-5

Posted on : 2012年1月28日 | Leave a comment

交通量はほとんどない。店の前に駐車して車から降りる。寒い。店の扉を開けて中を覗く。正面が待合席になっていて、その奥に、60がらみと思われる理容師のおっちゃんが座って新聞を読んでいた。ほかに客はない。
自分の頭をなんとなく指さしながら「お願いできますか」と尋ねる。腰を上げたおっちゃんは「いいですよ」と快諾。「車で来たのですが、どこに止めれば良いですか」というつかみのやりとり。おっちゃんは「駐車禁止の道路ではないので、どこでもいいよ」という理想的な返事をくれた。
いちど車に戻り、店の前に寄せ直して再度入店。ひとごこちついた。タカラベルモント製の理容椅子が2脚。入り口に近い側の右の椅子に案内される。上着を脱いだりして着席。
着席すると「このあたりに遊びに来たのかい」と声をかけてくれた。どうやら興味を持ってもらえている様子だ。なかなか良いぞ。
「雪が降っているところを車で走りたくて。それからいろいろなところで散髪するのが好きなので。失礼ながら、あまり一見の客が行きそうにない店に飛び込みで散髪するようにしています」と言うと、「一見のお客さんは今年初めてですね」と言われた。
いつものように「2cm残して全体を短くしてください」と伝えたところ、「全部2cmにするのではなく、すき鋏で1cm~2cmにしていくといまどきな感じになるよ」と助言をいただく。「じゃあそれでお任せします」と答えて散髪開始。
鏡越しに雪の話などしながら散髪が進む。川崎から来たこと、故郷が山口県で積雪がなく、雪道に憧れて、わざわざ積雪地帯に出かけることにしていることなどを話す。
ふと前方の鏡の上を見ると、雪が残る渓流を歩く人物の写真がいくつか並べてあった。「あれはご主人の写真ですか」と聞くと、写真の被写体はおっちゃんの友人で、撮影したのがおっちゃんだということ、場所は真夏の月山で、万年雪が残っていること、渓流釣り目的であるという答えが返ってきた。ここから話題が広がる。
「月山は、嫁父のルーツが鶴岡である関係で、何度か出かけた。雪が残る山といえば奥只見にも行ったことがあり、福島川、新潟側でそれぞれ散髪したことがある。釣りはまともにやったことがないが、鳥が好きなので、ヤマセミ見たさで渓流釣りにも興味がある。散歩しながら写真を撮るのも好き」
「奥只見も雪深い。会津にもよく出かける。会津の釣行を釣り雑誌に寄稿したことがある。渓流釣りはおもしろい。1年10回、5年やれば、それなりの技術が身につくはず。鳥は知り合いのカメラマンがヤマセミの写真集を出した」
などなど。ほかにも、文書として残すのがはばかられる話題もちらほら。ともかく、おっちゃんは理容師かつ渓流釣り師かつ野鳥好きだということがよくわかる1時間強であった。
散髪そのものに関しては、耳の上を剃ってもらうときのカミソリが、勢いあまって耳にあたっても切れないようにプロテクターがついている、21世紀になって発売された商品であること、耳かきサーヴィス付きであったことが印象に残る。
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散髪が終わると、お茶とお茶菓子をいただき、おっちゃんが寄稿した雑誌などを見せてもらった。改めて見ると、待合スペースには釣り関係の本やオブジェがたくさん並んでいた。
いろいろと新しいものを取り入れている店の中、レジは、足尾の散髪屋で見た、カタカナが書かれたキー付きの、古めかしいあれだった。
最後におっちゃんとの記念撮影をお願いすると、「散髪屋らしく」ということで、いちど脱いでいた白衣を再度着用し、ドライヤーを手に持つなどしてくれた。
「雪の様子が知りたければ電話してください。また遊びに来てください」と言われて、20時過ぎにお開き。12月、1月のお客にはプレゼントしているというハンドクリームをお土産にもらった。
下道で帰ろうと思ったが、面倒なので関越道使用。土日の夜ならたいてい渋滞している印象だが、平日休みの強みで、ほとんど混雑もなく、2時間弱で帰宅。ああ楽しかった。散髪はええのう。

Category : 散髪, 編集後記ゲ
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